約10年ほど前になりますが、NHKで「監査法人」というドラマがあったことをご存知でしょうか?
また、現在これまたNHKで「これは経費で落ちません!」というドラマも放送していますが、見られている方はいらっしゃるでしょうか?主演の多部未華子がかわいい・・・という話は置いといて、時折、会計に関連するドラマが放送されますが、会計士という職業を選んだ者として、会計に関連するドラマと聞くと興味が湧いてしまいます。
さて、本日は会計、というより税務よりの話ではありますが、私が最近読んだ本のご紹介をしたいと思います。
その本とは、
「少数株主」
という小説です。
作者は弁護士でもある牛島信氏で、他にもいくつかの企業小説を書かれている作家です。
この本は会社の中でも非上場会社の少数株主にスポットを当てた小説となっており、普段意識していなかった株式にまつわる盲点、経営の問題点等に気づかせてくれます。
あまり本の内容を記載するとよろしくないですが、一例を挙げておきます。
ある非上場会社の株式を相続した男性がおり、彼は当該株式の評価額を465万円と評価し申告しました。その後、税務署は彼が465万円と評価した株式の価値を1億6000万円と評価し、トータル1億円もの相続税を課したのです。
こちらは小説に出てくるエピソードではありますが、実際に起こった事例を基にしています。そもそもこれほど一納税者と税務署の評価手法とで乖離が生じてしまうことに驚きであることに加え、上場株式ですと最悪市場に売却して現金化すれば税金を払う財源にすることは可能ですが、非上場株式はそうもいきません。通常、非上場株式には譲渡制限がついており、自由に売買できないようになっていることが多いためです。
現在IPO支援業務に携わっているなか、もちろん上場していただくことを念頭に全力でサポートさせていただいていますが、一方で、上場を延期・断念せざるを得ない企業様もやはりいらっしゃいます。
こうした場合に、当該会社の株主様の出口戦略についてはしっかりとした準備・方策を持っておくことが重要です。オーナー経営者様ですと、自分の持っている株式をどうすべきか?といったことは常に頭にあると思いますが、そのほか、特に少数株主の方ですと、普段自分の持っている株式の価値がいくらなのか、株式を保有し続けると将来どうなるのか、といったことにあまり意識がないかもしれません。
少数株主の持つ株式はもちろんプラスの財産ではあるが、同時にマイナスの財産にもなり得ることを理解しておなかければなりません。
小説としては好みは分かれるかなと思いますが、テーマとしてはおもしろく、普段意識していなかったことに気づかされた一冊でした。知識の向上にありがたい読み物です。
少数株主の方、ご興味の湧いた方は一度手に取ってみてはいかがでしょうか。