電子帳簿保存法の改正

いよいよ東京オリンピックも開幕し、夏本番といった季節となってきましたが、その一方新型コロナウイルスは相変わらず猛威を振るっていますね。その新型コロナウイルスの影響もあり、昨年からテレワークの推進や行政手続きのオンライン化などが進められる中、DXへの取組が急務になっているということもあり、令和3年の税制改正で電子帳簿等保存制度が大幅に緩和されました。

そのため、昨年までほとんど聞かれることのなかった電子帳簿保存法について、最近急にお問い合わせを受けることが増えてきましたので、ここで少し電子帳簿等保存制度の概要、及び令和3年の税制改正で何か変わるのかについてまとめておこうかと思います。

まず、この電子帳簿等保存制度を理解するポイントの1つとしてあげられるのが、今どこの話しをしているのか、明確にすることだと思います。

すなわち、この電子帳簿等保存制度の全体像としては大きく以下の3つに分けられます。

① 国税関係帳簿や国税関係書類の電磁的記録・COMによる保存

② 国税関係書類のスキャナ保存

③ 取引に関するデ情報の授受が電子データで行われる電子取引

ですので、電子データで保存したいものが上記のどこに入るのかをまず把握した上で、それぞれの要件を確認し、その対応を検討することが重要だと思います。

次に、令和3年度の税制改正のポイントとしては、以下のような点があげられます。

●税務署長の承認不要

上記①、②について、改正前に必要であった税務署長の事前承認が改正後は不要となりました。これにより、令和4年1月1日以降は税務署に申請を出さなくても、自己が一貫してパソコンを使って作成した国税関係帳簿や国税関係書類については保存要件を満たすかぎり電子データでの保存が可能となります。また、②のスキャナ保存についても同様だと考えられます。なお、③の電子取引については以前から税務署の承認は不要となっています。

●適正事務処理要件の廃止

②のスキャナ保存について、改正前に要求されていた適正事務処理要件と呼ばれるものが廃止されています。これは例えば、各事務の内容が適正に行われているかを確認する定期的な検査が求められたり(検査終了までは原本の保存が必要)、スキャナ保存を適正に行うための社内ルールとして規程の策定が求められたりするものであり、②のスキャナ保存制度を導入するのに大きなハードルとなっていたと思われますので、この改正もインパクトが大きいかなと思います。今まで何だったんでしょうね。

●タイムスタンプ要件の緩和

これは②のスキャナ保存を行う場合に電子データにタイムスタンプを付す必要があるのですが、その要件が緩和されたものです。改正前は3日以内とされていたタイムスタンプの付与までの期間が2ヶ月と概ね7日に統一されたり、書類の受領者が自らスキャナで読み取る際に必要とされていた自署が不要とされたり、訂正又は削除を行うことができないシステムを使って電子データの保存をする場合にはそもそもタイムスタンプが不要とされたり、ここでも大幅な緩和が行われたと言えるのではないでしょうか。

このように令和4年1月1日以降は電子データによる国税関係帳簿・書類の保存が大幅に緩和されることになります。もちろん、今回の改正が入ったからと言って、ヴァージョン管理(電子データの訂正又は削除を行った場合にその事実及び内容を確認することができる)などその他の要件が残っているため、直ちに適用できない場合もあるかもしれませんが、一度検討してみてはいかがでしょうか?きっとそのメリットは大きいと思います。

引地健児

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