有価証券報告書は、株主総会終了後に提出されるのが一般的な実務でした。この度、金融庁の要請をうけて3月決算の上場企業の多く※は、株主総会前の開示に向かうようです。
※5月7日までに公表された2025年3月期の決算短信には、326社うち62%にあたる203社が総会前の開示を予定と記載あり。(経営財務No3072号より)
さて、有価証券報告書を総会前に開示するにあたり留意・対応すべきことがいくつかあります。
①株主総会の想定問答準備
今まで株主総会は招集通知の情報に基づいて質疑が行われていましたが、有価証券報告書が開示されることでより、有価証券報告書で記載される幅広い内容を含んだ株主総会の想定問答対応が必要になります。(例えば、政策保有株の内容やKAMの内容などが該当しますかね)
こちら↓が参考になりそうです。(BUSINESS LAWYERS 「有価証券報告書の株主総会前開示に関する想定問答例」)
「有価証券報告書の株主総会前開示」に関する想定問答例 – BUSINESS LAWYERS
②有価証券報告書の記載
有価証券報告書の記載項目のうち、定時株主総会又はその直後の取締役会での決議事項になっている事項は、その旨及びその概要を記載することになります。
配当関係
1.主要な経営指標等の推移
2.配当政策
3.配当に関する注記事項(株主資本等変動計算書関係)
ガバナンス関係
4.コーポレート・ガバナンスの概要
5.役員の状況
6.監査の状況
7.役員の報酬等
こちら↓が参考になりそうです。(金融庁「有価証券報告書を定時株主総会前に提出する場合の留意点」)
③業績連動型給与の損金算入
損金算入するためには、算定方法の開示が必要となりますが、報酬諮問委員会の諮問を経た取締役会の決議がなされていること及びその内容が手続き終了日以後、遅滞なく有価証券報告書などに開示されていることが必要となります。
この点、総会前の有価証券報告書には、それら一定の手続による「決議予定の内容」が開示されているにとどまるため、これだけでは損金算入が認められないというわけです。というわけで、有価証券報告書の開示後に行われた取締役会決議後に改めて適時開示等で開示することが損金算入要件と必要となります。
代表社員 西村強