―宗教法人会計は企業会計とこんなに違う
この夏 お墓参りに行った際、和尚さんから ふと「20万円のパソコンを買いました。仕訳はどうなるのですか?」とご質問を受けました。「うちの決算書、貸借対照表がないんですよ」とも。
そんなことがあるのでしょうか? 家に帰って調べてみると宗教法人の決算書や会計処理は、企業会計とは別世界が広がっていましたーーー。お盆ということで少し宗教法人会計の世界をのぞいてみましょう。
企業会計に慣れている人なら、まずこう考えるでしょう。
器具備品 20万円 / 現預金 20万円
そして耐用年数にわたって減価償却――。ところが宗教法人では、必ずしもこの発想になりません。実は宗教法人会計は、企業会計とは 「決算書を見る角度」そのものが違う のです。
そもそもBSを作らない宗教法人もある
企業会計では貸借対照表(BS)は決算書の主役です。ところが宗教法人法では、すべての宗教法人にBSの作成を義務付けているわけではありません。なんと、BSは作成任意の決算書だったのです。では何を作るのか。重要なのが「財産目録」です。
財産目録は、期末時点で法人がどのような財産を持っているのかを明らかにする書類で、すべての宗教法人に作成義務があります。さらに一定の小規模宗教法人では、収支計算書についても当分の間、作成義務が免除されています。つまり極端にいえば、「PLもBSもない。でも財産目録はある」という決算も、宗教法人の世界ではあり得るのです。
では、20万円のPCはどうなる?
ここが面白いところです。収支計算書を作成する宗教法人なら、PCを購入した年度には、
備品費支出 20万円
などとして、まず**「20万円のお金を使った」**ことを収支として捉えます。しかし、期末にはPCそのものが残っています。そこで財産目録には、
器具備品 パソコン ○台 ○○万円
などとして、「現在持っている財産」として把握します。
つまり、
収支計算書 → 今年、お金を何に使ったのか?
財産目録 → 今、何を持っているのか?
という決算書の役割分担です。(なお、BSは任意書類であるためBSと財産目録の整合性も要求されていません)
企業会計の「資産か費用か?」という二者択一とは、少し発想が違います。
「企業会計の簡易版」ではない
宗教法人会計を理解するうえで、ここが一番大切かもしれません。宗教法人会計は、単なる「企業会計を簡単にしたもの」ではありません。企業なら、株主、投資家や債権者の目線で
利益はいくらか?
資産・負債はいくらか?
が中心になります。
宗教法人なら、株主、投資家や債権者の目線は一切関係なく
お金をどのように受け入れ、何に使ったのか?
法人の財産を現在どのように保有しているのか?
が重要になります。だからこそ、制度も
収支計算書=お金の流れ
財産目録=財産の現在地
という構造になっているのです。
企業会計の常識から少し離れてみると、宗教法人会計の仕組みは意外と合理的です。「20万円のPCを資産にするか、費用にするか?」という質問から始めても、突き詰めていくと、
「そもそも何のために会計をするのか?」
というところまで話が戻ってくる。
宗教法人会計の世界。 いかがだったでしょうか? 合掌
代表社員 西村強
参考資料